「B型事業所(就労継続支援B型事業所)」は、障がい者福祉の中でも非常に重要な存在です。
以下で、役割・目的・利用対象・仕事内容・A型との違いまで、わかりやすく詳しく説明します。
就労継続支援B型事業所とは
就労継続支援B型(以下「B型事業所」)は、
「一般企業での雇用が今は難しいけれど、働く意欲はある」
という方が、自分のペースで“働く練習”や“社会とのつながり”を持てる福祉サービスです。
正式には「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスの一つで、“就労支援”と“日中活動の場”の両方の性格を持っています。
「すぐに会社で働くのは難しいけれど、何かできることをしたい」「外に出て人と関わりたい」、そんな人が、安心して通いながら仕事を体験できる場所です。
働くことを通じて、
・生活リズムを整える
・作業の練習をする
・社会と関わる自信をつける
といったサポートを受けられます。
たとえば、
・長時間勤務や人間関係のストレスで企業を離れた方
・発達障がいで就職は難しいが、何か作業をしたい方
・精神障がいがあり、通院しながら無理のないペースで働きたい方
などが利用しています。
B型事業所は単なる「働く場所」ではなく、
「働くことを通じて生活を整え、自信を取り戻すリハビリ的な場」なのです。
B型事業所の主な役割は?
役割 | 内容 |
① 働く場の提供 | 体調や障がいの状態に合わせて、無理のない範囲で仕事を行う環境を提供する。 |
② 生活リズムの安定 | 通所や作業を通して、規則正しい生活習慣を身につける。 |
③ 社会参加の支援 | 外出・対人交流・チーム作業などを通じて社会との関わりを促進。 |
④ 技能・能力の向上 | 軽作業や創作活動を通して作業能力や集中力を高め、将来的な就職に備える。 |
⑤ 自立生活の支援 | 収入を得ることで、金銭管理・自己決定・社会的自立を促す。 |
どんな人が利用できるの?
利用対象は、次のような方です。
・身体障がい・知的障がい・精神障がい・発達障がいのある方
・難病のある方
・医師や支援機関により「一般就労が困難」と判断された方
具体的には、
・就職しても長続きしなかった
・通院をしながら無理のない働き方をしたい
・社会とのつながりを持ちたい
・昼間の過ごし方を安定させたい
といった方が利用しています。
また、障がい者手帳がなくても、医師の意見書や診断書があれば利用できる場合があります。
(例:うつ病や発達障がいなど、診断書のみで利用しているケースも多いです。)
※ 18歳以上で、市区町村の「障害福祉サービス受給者証」を持っている人が対象です。
利用できる人(対象者)
条件 | 説明 |
対象 | 身体・知的・精神障害、発達障害、難病などのある人 |
年齢 | 原則18歳以上(15歳〜65歳未満が中心) |
状況 | 一般就労が困難だが、軽作業などが可能な人 |
例 | うつ病・統合失調症・発達障害・知的障害・身体障害・難病 など |
どんな目的で利用するの?
B型事業所の目的は「働く」ことそのものだけではありません。
「働くことを通じて、生活と心のリズムを整える」ことが最大の狙いです。
利用者の目的は人によって違います。
たとえば:
・働くリズムを取り戻したい
・人との関わり方を練習したい
・自分にできることを増やしたい
・将来、A型や一般就労を目指したい
・無理のない範囲で社会とつながっていたい
B型事業所では、作業だけでなく「生活支援」や「メンタルサポート」も行うため、
“働くこと”と“生活すること”をセットで支える仕組みになっています。
B型事業所で行う仕事(作業内容の例)
分野 | 仕事の内容 |
軽作業 | 封入・袋詰め・シール貼り・組み立て・検品 |
農業 | 野菜や花の栽培、収穫、出荷作業 |
清掃・リサイクル | ビル清掃、資源分別、地域の環境美化活動 |
食品加工 | お弁当・パン・お菓子の製造、販売補助 |
手工芸・創作 | アクセサリー・雑貨・陶芸・布製品の制作 |
IT関連 | データ入力、デザイン補助、簡単なプログラミングなど |
それぞれの体力や得意分野に合わせて、できる作業から始められるのが特徴です。
給料(工賃)について
B型は雇用契約を結ばないため、給与ではなく「工賃(こうちん)」が支払われます。
平均月額:約1〜3万円ほど
作業した量や時間で金額が変わります。「お給料」というより、「働いた成果の報酬」というイメージです。
項目 | 内容 |
平均工賃(月額 | 約17,000円前後(令和5年度・全国平均) |
仕組み | 作業量や時間に応じて支給(時給換算100〜300円程度) |
特徴 | 働いた成果の“報酬”として支給されるが、生活費にはならない場合が多い |
補足 | 一般就労を目的とせず、「社会参加・リハビリ的就労」としての性格が強い |
A型事業所との違いは?
就労継続支援には「A型」と「B型」があります。どちらも「働く支援」ですが、制度上の大きな違いがあります。
項目 | A型事業所 | B型事業所 |
---|---|---|
契約形態 | 事業所と雇用契約を結ぶ | 雇用契約を結ばない |
報酬 | 給与(時給制など) | 工賃(作業の成果に応じた報酬) |
勤務時間 | 一般企業に近い(1日4〜6時間など) | 柔軟(1日2〜4時間なども可) |
求められる体調・スキル | 一定の就労能力が必要 | 自分のペースで作業できればOK |
目的 | 一般就労への移行・維持 | 生活リズム・社会参加・リハビリ |
B型とA型では、雇用契約など基本的な点からも大きく異なります。
利用までの流れを教えてください。
利用するためには、「障がい福祉サービス受給者証」が必要です。
以下のような流れで進みます。
💡 利用開始までのステップ
1️⃣ 見学・体験利用
気になる事業所を見学し、作業内容・雰囲気・通いやすさを確認します。
2️⃣ 相談支援専門員への相談
「サービス等利用計画」を一緒に作ります。
(計画書には「どういう目的で利用するか」「週何回通うか」などを記載します。)
3️⃣ 市区町村に申請
障がい福祉課に必要書類(手帳や医師の意見書など)を提出します。
4️⃣ 受給者証の発行
審査を経て、約2〜4週間ほどで受給者証が発行されます。
5️⃣ 事業所と契約 → 利用開始!
契約後、初回面談でスケジュールや作業内容を相談します。
💬 多くの事業所では「体験利用」期間を設けており、
数日間お試しで通ってみてから正式に決められます。
どういう支援理念で運営されているの?
B型事業所の根底にある理念は、次のような考え方です。
「人は誰でも、社会の中で“役割”を持つことで生きる力が湧く」
そのため、
・作業を通して“自分にもできることがある”と実感してもらう
・「できた」「ありがとう」と言われる経験を積む
・その積み重ねで、少しずつ自己肯定感を取り戻す
こうした“小さな成功体験”を重ねることが、B型事業所の最大の支援目的です。
職員は単なる作業指導員ではなく、
「伴走者」や「コーチ」のような立場で、生活全体を支えています。
どんな雰囲気の場所なの?
B型事業所は、事業所ごとに個性がありますが、共通しているのは「穏やかで安心できる雰囲気」です。
多くの事業所では、
・無理をさせない
・体調を最優先する
・人と比べない
・ゆっくり慣れていく
という文化が根づいています。
利用者の中には、
「ここに来るのが生活の支えになっている」「人と話せるようになった」という方も多くいます。
B型事業所の社会的役割(まとめ)
「働く喜び」を提供する場
→ 就労困難者が社会とつながりを持つための貴重な環境。
地域共生の拠点
→ 地域の企業・住民との協働を通じて、地域貢献にもつながる。
福祉と経済の橋渡し
→ “保護”ではなく、“生産活動による社会参加”を支援する。
ステップアップ支援
→ 状況が安定すれば、A型や一般就労への移行をサポートする。
どんな支援があるの?
・作業のサポート(職員が一緒に教えてくれる)
・生活相談(体調や人間関係の悩み相談もOK)
・将来の進路相談(希望があればA型や一般就労へのステップアップ)
送迎・昼食サービスなどを行う事業所もあります。
デメリットはどんなことがある?
① 工賃(もらえるお金)がとても少ない
B型では「お給料」ではなく「工賃」という形でお金をもらいます。全国の平均は、1か月で1〜3万円くらいです。つまり、「生活のために働く」というよりは、「社会とつながる」「リハビリや練習として働く」場所です。
② 一般の会社への就職につながりにくい
B型は「無理をせず、自分のペースで働く」ことを大切にしています。そのため、ステップアップして就職する人は少ないです。「ここからA型や一般企業に行きたい」という人は、事業所選びや支援内容をしっかり確認する必要があります。
③ 事業所によって質の差がある
B型事業所は全国にたくさんありますが、中にはサポートが少ない・作業内容が単調・職員が少ないなど、あまり良くない施設もあります。見学して、「雰囲気・職員・作業内容」をよく見てから決めましょう。
④ 人間関係が難しいこともある
B型では、いろいろな障がいをもった人が一緒に作業します。そのため、
・ペースが合わない
・声が大きい人がいる
・トラブルが起きる
など、人間関係でストレスを感じることもあります。職員さんに相談すれば、作業場所を変えたり、調整してくれます。
⑤ 社会の理解がまだ足りない
「B型で働いている」と言っても、一般の人にはどんな仕事をしているのか伝わりにくいことがあります。そのため、誤解されたり、評価されにくいと感じる人もいます。でも最近は、地域での販売会やイベントなどで、B型の活動が広く知られるようになってきています。
まとめ
B型事業所は、「働く」ことと「生きる」ことをもう一度つなぎ直す場所です。
一般就労と比べる必要はありません。競争ではなく、「自分らしいペースで過ごすこと」が価値になります。焦らず、比べず、あきらめず。その一歩を踏み出すことが、B型事業所の最初の“お仕事”です。
B型事業所に参加することは、大きな第一歩です。B型でできること、できないことをしっかり理解したうえでうまく活用して、自分の人生の糧にしましょう。
継続して仕事を続けることで、自分にも自信が付き実りある生活へつながるでしょう。